2008年02月18日
契約トラブル その拾 打算
翌日、会社で再度会議が行われた。
メンバーはウエダ、店長のシモヤマ、部長のナカタ、支店長のウチムラの4人。
ウエダたちは支店長室に入っていった。
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支店長のウチムラは概略の報告だけは受けていた。
ウエダに対してウチムラが持っている印象はこうだ。
トラブルもなく、営業成績こそ並だが社内での受けも良い。
存在感は薄いが、人柄の良さを感じる営業マンだった。
「できるだけ早期に解決するにはどうすれば良いか考えよう」
ウチムラの言葉で会議が始まった。
店長のシモヤマから経緯説明。
昨日のお客さんの反応。
などが簡潔に報告された。
ポイントははっきりわかっている。
営業の説明に不備がなかったかどうか。
不備があったとして希望されている仕様に差額無しで変更するのが妥当な内容かどうか、である。
ウチムラ「客の立場にしてみたら、できるといっていた仕様がとても高額になるのは一切知らせずに、資金に関するアドバイスまでしておいて、それを超える金額を平気で提案してくるのはおかしいだろうと言うことだな?」
シモヤマ「はい、その通りです」
ウチムラ「部長はどう思う?」
ナカタ「最悪の事を想定して、次の交渉で解決しない限り解決が長期化するのは間違いないと思います」
ウチムラ「というと?」
ナ「こちらにも言い分がありますが、お客が経済的に成り立たない提案をしています。契約を急ぎすぎて仕様関係の練りこみが不十分な状態で交わしました。こちらの対応が客にしてみれば矛盾するのは指摘された通りだと思われます」
ウチムラ「原価で120万円を会社で飲み込まないと納まらない、ということですか?」
3人「・・・・・・・」
ウチムラ「それは交渉ではないんじゃないですか?お客さんの言いなりでしょ?」
3人「・・・・・・」
ウチムラ「誰がそれの責任をとるんですか?」
3人(お前だよ、責任者なんだから)
ウチムラ「2,000万円そこそこの物件で、毎度ケチ付けられたから会社で120万円かぶれと言われるわけにはいかないからね。このまま、はいそうですかと認めたら他に示しが付かない」
3人「・・・・・・」
ウチムラ「もう一回話し合って来てくれないかな」
シ「支店長申し訳ないのですが、それはまずいとおもいます」
ウチムラ「なんで」
シ「昨日私が持ち帰ってきた話をもう一度ぶつけることになります。少なくとも私とウエダで訪問しても火に油を注ぐだけになると思います」
ナ「私が行って来たいと思います」
ウチムラ「そうだな、ナカタ部長に今回は動いてもらった方がいいだろうね」
ナカタとて経験上わかっている。
謝って済む種類の問題ではないのだ。
実際にお金が絡む。
支払い限度を超えて買ってもらうことを提案はできない。
とりあえず自分も行って謝る。
そして、何とか標準仕様で計画を進めることはできないか再度確認してくる。
結果がだめでも、会社に話を通すために必要なプロセスに、今回の自分の行動も含まれる。
そんな風に思っている。
実は年間2~3件、同様のトラブルが支店の中でも起きている。
数ある契約の中で多少のトラブル発生は仕方がない。
契約の取り方に問題があるが、その進め方で数が伸びている部分があるから、会社は知らん顔をしていければならない。
なにも違法なことをしているわけではない。
客が欲しいと言って、自分で判断しているのだ。
多少の情報操作的な面は否めないが、その方法で会社が維持されていることも事実だ。
たまに発生するトラブルは、確立的なものでやむを得ない。
ナカタはそう考えていた。
今回の謝罪訪問もトラブルを解決するための通過点のひとつ。
儀式的なものだ。
その後会社に申請を出す。
多少利益は減るが赤字になるわけではない。
自分が確かめに行ったことで、申請書を通す条件が整うはずだ。
ナカタの考えは問題解決までのシナリオを書き上げていた。
今まで何度も体験したシナリオだ。
今回もきっとそれで納まるだろう。
ナカタの心中などわからないウエダにとっては支店長室は異空間だった。
客の神経を逆なでするような対応にしか見えないのだ。
今まで見えていなかった会社の一面に戸惑いを感じた。
契約を取ったときには朝礼で拍手しておいて、トラブルが起きた時には「責任がとれるのか」と蚊帳の外に置かれる。
会社と客の間に挟まれ、ここ数日は眠れないし、食も細くなった。
嫌な予感だけが日に日に強くなっているような気がする。
この嫌な感じだけでも、早く晴れてくれればいいのに、と何度も思った。
ウエダ以外の3人は、ナカタのシナリオと同様の事を思っていた。
おそらくそれしか解決方法はないだろう。
お客に対しては誠実に対応したと主張できるし、社内での体面も立つ。
経験のないウエダだけが気をもんでいる。
しかし、ウエダは客に対して思い入れを持っているから、こちらが腹の中で考えているシナリオを知らせるわけにはいかない。
客に対してそれを伝える可能性があるからだ。
それをされてしまっては、ぶち壊しになる可能性がある。
それだけは避けなければならない。
暗黙の周知。
役者にならなければならない。
そんな打算が各人の腹の中にあった。
口にこそ出さないが、事態はこれで解決すると3人は思っていたのだ。
この時点では・・・
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- by
- at 08:49
コメント
どんどん すごいことに・・・
自分でも怖くなってきました・・・
どうなってしまうんでしょう?
毎日読んでいると、続きが待ち遠しくて・・・
ハラハラ、ドキドキ、気になります!!!
のっちさん
初コメントですね。
ありがとうございます。
楽しみにしていてください。